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HAND & SOUL

クリプトゾイック

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本を読んでいたら「クリプトゾイック」という言葉に出会いました。
生物学の古い用語ですが、最近では文明のわきで密かに生きることをおぼえ、文明に適応してしまった野生動物たち、たとえばアライグマやフクロウネズミなどの生活形態を表す用語として使われるのだそうです。
身近なところでは、「密かに生きる」とは到底いえないけれどカラスがその代表でしょうし、電話線などを齧って駆除の対象になってしまうタイワンリスや、海岸でくつろぐ観光客のお弁当をかっさらうトンビ、ウチの軒先で巣作りをしてくれないかと恋いこがれるツバメなども、その仲間なんでしょう。
ところで、近頃この時期になるとニュース種になるクマはどうなんだろう?
昨年豊作だったドングリが今年は一転して少なくなったため、人里にエサを求めて現れるとされてますが、かれらからみれば、身近に迫って来た人の生活圏なら比較的楽にエサを確保できることを覚えてしまったからでしょう。大きいし力もあるので、「密かに生きる」というわけにはいかず、ちょっと姿を見せるだけでも大騒ぎになり、猟銃会のにわか猟師の銃弾の犠牲になってしまうわけです。なんとか「クリプトゾイック」な存在でいて、われわれと共生して欲しいと願うばかりです。

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「クリプトゾイック」がヒトの側から自然界をみた用語であるとすると、自然界からヒトを眺めるとどうなるか?
年がら年中子づくりの真似事をし、自らの安全と快楽のために後から後から道具を開発し、資源とエネルギーを浪費しながら決して満足することを知らない、「密かに生きる」と対極にある生き物。近頃の原発事故で安全や快楽のコストがあまりにも高くつくことに気づきながら、生活形態を変えようとしない。自然に適応するより自然を適応させようと空しい努力を続ける生き物「ブンメイジン」ということになるのかしらん。
by love-all-life | 2011-10-24 08:11 | 自然