HAND & SOUL

HAND & SOUL「モノ」がたり 86 <船板のベンチ>

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何枚かの瀬戸内の船板などの廃材が手許にあります。2010年に開催された瀬戸内国際芸術祭のお手伝いで訪れた男木島で行われた「島・こころ・椅子」プロジェクトに参加した記念にと、プロジェクトリーダーのWさんから送ってもらった品です。

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湘南に住んでいると、釣り人やヨットマンでないかぎり海の景色というのは1本の線です。ところが瀬戸内海には水平線がありません。視界には点在する島影があり、行き交う船があり、橋があります。歴史や、暮らしや、産業に囲まれている実感があります。ところが周囲の近代化や文明の発展が却って島から若い働き手を吸取ってしまい、男木島は昨年最後の3人の中学卒業生を送り出して以来、島の住人は殆どお年寄りと猫だけになってしまった小さな孤島です。
島にはコンビニはおろか、まともな店一軒ありません。だから新しいもの、キレイなもの、便利なものはありません。しかし何もないわけではなく、古いもの、錆びたもの、汚れたものはいくらでもありますし、ゆったりと流れる時間と自然の営みがあるのです。
つまりジイジにとって男木島は可哀想な離島ではなく宝島だったのです。この島の廃材で再生椅子をつくって「椅子だった椅子」として小ブログで紹介したこともあります。

芸術祭から2年たったこの2月末から男木島文化祭なるものが開催されることになりました。島の住民とニ年前に島のプロジェクトに参加したアーチストたちが一緒になって、島の魅力をアート・文化の面から見直してみようとの企画で、こちらにも声がかかりました。

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ちょうどバアバの「雛展」の展示台として、船板のベンチを2つつくったところだったので、そのひとつを送ることにしました。
厚さ6センチの船板には、組木や釘の跡、はげたペイントやタールの痕跡、そして数えきれないほどの大小さまざまなキズがあります。それはまさに苦節に耐えて生きぬいた島の古老の潮焼けしたシワだらけ皮膚のようです。
島のお年寄りがこのベンチを見たときどんな評価を下すか、そこいらにいくらでも転がっている廃材で安直につくった安物の腰掛けとみるか、誰も省みないと考えていた自分たちの生活の痕跡も見方を変えると、かけがいのない財産なんだと気づいてくれるか、興味津々です。

・ベンチ(手前)1,100mm(W)×230mm(D)×420mm(H)
・ベンチ(奥) 1,400mm(W)×300mm(D)×430mm(H)
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by love-all-life | 2012-02-08 13:10 | 「モノ」がたり | Comments(0)