HAND & SOUL

20 DAYS AFTER

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それは自然災害のように突然やってきました。
宅配便が届けてくれたamazonの見馴れた段ボール箱を、オーダーの心当たりがないので訝しげながら開くと、出てきたのは異様な東北の被災地の光景に包まれた半田也寸志の写真集「20 DAYS AFTER」でした。
「誰から?」の疑問はどこかへ吹っ飛んで、ひたすら頁をめくり続けました。

この1年間数えきれないほどの被災地の映像を見てきました。どれもがとても信じられないほど痛ましい、悲惨な、驚くべき光景です。しかしこの写真集に収録された写真は、いままでの被災地のどの報道写真からも得られない強烈な印象を見るものに感じさせます。どこからこの異様な印象が生み出されるのか。
その理由の一因が、半田が現地の状況を推察し慎重に選択した、現時点で得られる最高のデジタルカメラの性能によることがあるとしても、それをはるかに超える写真作家としての感性とクリエイティビティの成果であることは疑いありません。

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天地創造を思わせる空の光。被写体はすべて人の痕跡なのに、ひとりも生きた人がいない孤独を通り越した底なしの寂しさ。デューラーの絵を想わせる鋭い現実描写。事実を写し取りながらも現実と思えない被災の真実。

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半田はこれらの写真を展示した写真展での趣旨で、現地に立ったときの印象を「・・・写真で見た事がある原爆投下後のヒロシマを思わせる様な辺り一帯の光景。異臭を放つヘドロ。海や海産工場から打ち上げられた途方もない量の魚類や人の遺体から発せられる死臭。そしてそれらを貪る海鳥や鵜たちから発生する大量の糞。タンクから洩れ出した大量のガソリンや化学合成物。備蓄してあった穀物や発酵食品。それらが全て堆積し混じりあって発生する例えようもない異臭。涙が溢れてきました。・・・」と記していて、現地で映像作家としての彼の心を最も乱したのが「臭気」であったことを告白しています。半田は五感すべてで感得した被災の現実を、視覚情報のみでどのようにして他者に伝えることができるか悩んだに違いあいリません。
何を切り取るか? どんなアングルで? どんな色で? どんな光で?
これらの設問が彼の感性を通過する課程で生み出されたのが「20 DAYS AFTER」であり、残酷、悲惨、醜悪が、美しくも表現し得るというもう一つの例です。
この写真集は大災害の実体を伝える無数の映像のなかにあって、事実のひとつとしてだけではなく、真実のひとつとして後世の研究者や歴史家の心に残る記録といえるでしょう。

ところで、この写真集はHAND & SOULを通じてお友達になった写真家のNさんからのプレゼントであったことがご本人からのメールで明らかになりました。Nさん本当にありがとうございました。
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by love-all-life | 2012-03-18 20:38 | 文芸・アート | Comments(0)