HAND & SOUL

HAND & SOUL「モノ」がたり 91 <流木のヒトデ、再び。>

e0153357_1074277.jpg








難しい生命科学の話をやさしく説いてくれる生物学者・福岡伸一さんはその著書「生物と無生物のあいだ」で、海岸でふと拾った小石と貝殻の違いをこのように述べます。
「小石も貝殻も、原子が集合して作り出された自然の造形だ。どちらも美しい。けれども小さな貝殻が放っている硬質な光には、小石には存在しない美の形式がある。それは秩序がもたらす美であり、動的なものだけが発することができる美である」。続いて、「動的な秩序。おそらくこ、ここに、生命を定義しうるひとつの基準(クライテリア)がある」として、生命の神秘というワンダーランドにわれわれうを誘っていきます。



e0153357_1093419.jpg

さて、ジイジが流木をいじりながら、これでヒトデを作ってみようかなと思いついたのも、どちらにも共通する「動的な秩序」を感じたからなのかも知れません。

流木を手に取ってしばらく眺めていると、それが命のかたちの痕跡であることに気づきます。なだらかな曲線、節やこぶ、木口に見える年輪、蔓がからんでつくられた螺旋状のねじれ、虫食いの跡・・・これらの流木の表情は、樹木の生長という時間の流れが組立てた秩序の証です。ただしその秩序は定規やコンパスでつくった堅苦しい規則性ではなく、一見融通無碍で自由奔放とも思える姿を纏った秩序です。この「柔らかな規則性」こそ自然のフォルムの特性であり、同じく自然のフォルムとして存在する「人」の心が郷愁のようななつかしさを感じてしまう所以なのでしょう。
流木はさらにその表面のマチエールや色彩もまた太陽や風や温度といった自然現象によって仕上げを施されて、樹木としての寿命を終えてはいてもオブジェとして新たな生命を得たかのようです。それは貝殻がすでに生き物ではなくなっても、その美しいフォルムとパターンによって命の輝きを失わないのと似ています。

命を失ったカタチに、オブジェとしての命を与える・・・こんな遊びに戯れています。

e0153357_10114624.jpg
[PR]
by love-all-life | 2012-05-23 10:16 | 「モノ」がたり | Comments(1)
Commented by moriya at 2012-05-29 21:39 x
以前の「流木のヒトデ」を手元に置き、愛でております。
見飽きない魅力のわけは、そういうことだったのだと
あらためて合点しました。

新しく登場したクモヒトデタイプのフォルムにも、
とても心魅かれます。