HAND & SOUL

HAND & SOUL「モノ」がたり 103 <筒石の船板>

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中越の長岡から日本海に出て北陸道を南西に下って上越市を過ぎると、左手の山が海岸に迫ってきてやたらにトンネルが増えます。あまりのトンネルの多さにいい加減嫌気がさすころに糸魚川市にさしかかり、その手前にいまは糸魚川市に併呑された能生の町があり、その入り口に筒石という集落があります。
長い海岸線に沿った国道8号線ならどこで車を停めても海岸の漂着物を漁ることは可能ですが、どこでもよいとなるとかえってどこで停めてよいか迷います。そんな迷いながらのドライブを重ねているうちに、いつしかこの筒石にさしかかるといつも車を止めるようになりました。
海岸ぎりぎりまで迫る山と国道とのわずかな隙間にひっそり肩を寄せ合って並ぶ集落に人影はなく、国道の下の狭い浜辺には朽ちかけた無人の漁師小屋が寂し気に並んでいます。
この筒石の港は近くに小さいながらも新しい漁港ができて、いまでは人も仕事もそちらに移ってしまったらしく、波や風に晒されっ放しですっかり忘れ去られ、地域そのものが漂着物といった感じなのです。

ある日ジイジ、バアバがビーチコミングなどという洒落た感じではなく、バタ屋さんよろしく流木などを漁っていると、向うの漁師小屋の前に老人がひとり立っているのが見え、ジイジ、バアバは思わず顔を見合わせました。というのも漁師小屋の中には朽ちかけた漁船や漁具や古びた木材が雑然ながら山積みされているのを以前から知っていて、「いいねェ、欲しいね」「こんなの安く売ってくれないかしらね」などと話し合っていたからです。

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こういうときのバアバは敏捷です。おじいさんに近づいて何やら二言三言話して、息づかい荒く戻ってきて言うには「タダで持って行っていい」と言っているというのです。「エッ、本当に?」と宝の山を掘り当てたような気持でしたが、もちろん素手で持ち帰るわけにもいかず、取りあえずおじいさんの名前と電話番号を聞いて、お礼を言って別れました。その後、いろいろな人のお世話になり、結果的にウン十万円かけて我がものになるまではIt’s a long story.なのですが、おじいさんが言った「タダ」というのは本当で、かかった費用は大部分が運搬費でした。

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あれから8年、6センチ厚の船板8枚や古い柱などを大工の次男の下小屋に置いてもらい、2月末の青山での展覧会に向けて、そのうちの2枚を実家に運び込んで作品づくりに用いることにしました。
北海の波涛を潜ってきた荒くれ男といった風貌の船板は、普段扱っている手軽で安手の板材とはわけが違い、釘や砂を板の中の中まで含んていて製材所でも加工を断られてしまう曲者です。2階級、3階級上の相手と試合をする柔道選手の気持といったらいいのでしょうか、いつも鯵や鯖をさばく包丁でマグロをさばくといった感じです。
改めて当方の技量の拙さを痛感しながらなんとかモノにしようと悪戦苦闘の末に完成したのが、小型のテーブルと腰掛け2脚のティテーブル・セット、「Tea for tow」です。

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筒石写真:jhomonjin














































































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by love-all-life | 2013-02-17 21:46 | 「モノ」がたり | Comments(0)