HAND & SOUL

最高の人生の見つけ方

e0153357_215723.jpg





周囲の丘の稜線がこ子猫の背中みたいにふんわりと柔らかくなり、木の芽、若葉、花の色がパステル画のように綾なす季節になるといつもある感慨をもちます。
「あ〜、あと何回この景色を見ることができるのだろうか・・・」

自分の生涯時間というものを意識したのは、多分30代後半のことだったと思います。「オレのこれからの人生の長さは、すでに経験した時間の長さなのだ。」とフと思ったのが最初だったような気がします。
以来、既知の時間と未知の時間の長さの反比例は容赦なく着実に進行しており、昨年他界した音楽評論家・吉田秀和さんの言葉を借りれば、「若い時の一日の終わりは、それだけ自分が生命の出発点から遠くまで歩いてきたかを意味していた。しかし、今は同じことが終点への接近を意味する」という意識が年を追うごとにリアリティを増してくるのはいたしかたありません。


こんなシンキ臭い話をし始めてしまったのも、先日の夜観たTV映画『最高の人生の見つけ方』のせいかもしれません。

e0153357_2163332.jpg






当方は、ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン主演という、芸達者なアカデミー賞コンビのキャスティングに惹かれて観たのですが、アメリカでも日本でも封切り当初大変な興行成績をあげた評判の映画だったようです。
ストーリーは、偶然に同じ病院でベッドを隣り合わせた、しかも偶然にも同じ余命6ヶ月を宣告された2人の末期癌患者。一人は大富豪のエドワード、もう一人は謹厳実直な自動車整備工カーターが、それぞれの「死ぬまでにやっておきたいこと」をリストにして、病院を脱出し、リストの項目をひとつひとつ実現して行くというお話です。
「棺おけリスト(Bucket List)」なる項目には、カーターは「荘厳な景色を見る」、「赤の他人に親切にする」、「涙が出るほど笑う」と記し、エドワードは「スカイダイビングをする」、「マスタングを乗り回す」、「ライオン狩りをする」、「世界一の美女にキスをする」などをつけ加えます。
病院を飛び出した二人の生涯最後の冒険旅行は、タージマハルから野生の楽園セレンゲティ、最高級のレストランからいかがわしいタトゥーショップ、レースカーのコックピットからスカイダイビング用の小型機まで。
二人は生きる上で直面する様々な疑問に取り組みながら、ひとつづつリストを埋めていく中で生涯の友を得て、死の時を迎えます。

死をテーマにしながらこれほどカラッと笑えて、奇想天外な状況設定もアホらしく感じられないのは、監督のロブ・ライナーの力量であるにしても、主人公の二人が芸を乗り越えて実在人物のように感じられるほど感情移入をしてしまったのは、こちらが同世代だからでしょう。
いつかこちらも「棺おけリスト」をつくる日がくるとして、「エドワードのような相棒に出会う」を項目に加えようかしらん。
[PR]
by love-all-life | 2013-04-10 21:08 | 文芸・アート | Comments(0)