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HAND & SOUL

めでたさも中くらいなり・・・



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登録申請をしていた日本の世界遺産候補のうち、富士山が文化遺産として認められる見通しとなり、一方「武家の古都」をアピールしていた鎌倉は見送られることになりました。
富士山の世界遺産は、日本人なら喜ばぬ人はいないでしょう。それも空缶だらけの自然遺産とてではなく、見た人に精神的インパクトを与えずにはおかぬ文化遺産としての「霊峰富士」が認められたことで、かえってよかったと思う人も少なくないのではないでしょうか。

さて、鎌倉です。
鎌倉は地元でもあり、許諾の行方に強い関心はありました。かなり前から市を挙げて誘致運動をしていたし、自分の住む街が後世に残すべき高い文化価値があると太鼓判を押されるとなれば決して悪い気持ではありません。
しかし一方では、長年住んでいると、細い路地の奥の奥まで舗装され、古くからのお屋敷が次々と取り壊されて跡地が分譲され新建材の家々にとって代わられ、街角に雨後のタケノコのようにコンビニが増えるのを見ていると、「これが武家文化の街?」「これでで世界遺産とは、おこがましい」の念が湧いてくるのを抑えるのに苦労します。
ということで、世界遺産になることを期待する気持と、「なったら、恥ずかしい」という気持が半々だったというのが正直なところでした。したがって、いざ落選となると「ちょっと、がっかり」と「ホッ」というのが半々です。

ところで、世界遺産とは、言うまでもなく後世に残すべき環境や文化を人類の宝物として指定して、世界レベルでみなで守っていこうという試みです。
それに指定されるかどうか一喜一憂の大騒ぎをするのは、地域の名誉という側面もあるでしょうが、実際は観光資源としての価値に大きな影響を与え、地域に莫大な経済効果が見込めるからでしょう。
しかし、もしそれが本当だとしたら怖いことです。世界遺産になって、そこに群れをなして人が集まり、莫大なお金を落として、その地の行政や市民の自尊心が満たされ、商業関係が潤うことがあったとしても、世界遺産にとって多分ロクなことは起こらないでしょう。
世界遺産は現存する人々のためのものではなく後世の人のものなのです。それによって現存する人々が甘い汁を吸えば、後世にはまずいカスしか残らないでしょう。
後世に甘い果実を残そうとするなら、現存する人々は後世の人々の感謝を夢見ながら、そのために汗を流し、空腹を我慢しなければなりません。その覚悟があってはじめて世界遺産を受け入れる準備が整ったといえるのではないでしょうか。
その覚悟と準備ができたとき、再挑戦しようではありませんか。
by love-all-life | 2013-05-03 00:35 | 時事・社会