HAND & SOUL

鎖をきるのは、いつ、誰が?



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国際社会で活躍出来る人材の不足が嘆かれて久しいですが、かけ声や議論だけがだらだらと続いていて、海外への留学生数は他のアジア諸国に比べて相対的にどんどん低下する一方で、凋落日本の姿をそのまま現しているかのようです。
そんな現状に業を煮やしたのか、少子化で困った私立校や予備校の窮余の戦略なのか、予備校大手の河合塾が都内の私立高校と提携して、米ハーバードや英オックスフォードといった海外の名門大学進学を目指す中高一貫校を設立する計画が報じられました。一つの石が転がったの感はあります。

かって森首相の英語力を揶揄するジョークがマスコミで話題になったことがありました。
クリントン大統領との日米首脳会議に際し、首相の英語を心配した側近が、とにかく”How are you?”と“Me, too.”とだけ言うようにアドバイスをしたところ、いざ会うや”Who are you?と言ってしまい、大統領が苦笑しながら、ユーモアと思い”I’m Hillary’s husband.”と答えると、森首相はなんと” Me, too.”と応じた、というものです。
このジョークはねつ造だったことが明らかになっていますが、自らの英語力の劣等感を茶化すのに、自国の首相をバカにして溜飲を下げるとは、日本人の英語にたいする心理にはどこか屈折したものがあります。
尊王攘夷の江戸末期から引きずっている根強い劣等感と、欧米なにするものぞという空威張り的な優越感の間でゆれる気持です。

幕末から明治にかけて、英語を身につけるには今とは比べようもないほどの劣悪な学習環境のなかで、一部の開明的な若者たちの血のにじむような努力があって、日本は近代国家としてスタートを切ったのでした。
太平洋戦争の敗戦で、優越感のかけらも失い、劣等感を劣等感と意識することさえ忘れ、ひたすらフルブライトの奨学制度にしがみついて猛勉強した時代を経てやっと手に入れたのが高度経済成長でした。しかし世界第二の経済大国になるや、日本は原語で勉強しなくても日本語で書かれた書物で充分最高水準の勉強ができる幸せな国で、植民地にならなかった証拠だなんていう大口をたたくものさえ現れました。国内だけで仕事をしているうちはよかったが、グローバル化の大波が押し寄せてきて、コミュニケーションができないで立ち往生している間に後ろから来た国にどんどん追い抜かれているのを知っていながら国はいつまでたっても有効な手だてを打てないでいます。TPPにしても、外国人雇用にしても、そして英語教育にしても、いまだ鎖国時代の残滓を引きずっているようにさえ感じられます。

言わずと、英語ができれば即国際人になれるわけではありません。「日本語が下手な人も、外国語を身につけられるけれども、その日本語の下手さ加減よりもさらに下手にしか身につかない」という作家の故米原万里さんの言葉もあります。
新設計画中の私立高校が、高度な英語力を身につけるためのたんなる受験校なのか、自国と世界の歴史、文化、アートを論じられるグローバル人材の育成を目指すのか興味のあるところですが、ま、小さな石であれちょぴり動いたというところでしょう。さて、大きな岩を国はどう動かす?
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by love-all-life | 2013-07-15 12:01 | 時事・社会 | Comments(0)