HAND & SOUL

「コーネルの箱」


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この欄で紹介したことがありますが、HAND & SOULの金曜日はHAND & SOUL+BOOKとなって、店内の棚に古本を並べます。
バアバの「内藤三重子さんのこと」の著者であるナーヤこと村椿菜文が本を選んで並べていましたが、娘の保育園の関係でしばらくお休みすることになり、代わってNさんとAさんに選んでいただいています。お二人はジイジ・バアバといろんなところで価値観を共有するので、二人が選んだ本の棚を見て、「え!、これ読んでない。」「面白そう!」といった感じで、棚の本をつまみ食いする楽しみが増えました。

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で、今週のつまみ食いは、チャールズ・シミック著「コーネルの箱」でした。
ジョセフ・コーネル (Joseph Cornell、1903年 – 1972年)は20世紀に活動したシュルレアリズムの芸術家のひとりで、アッサンブラージュという、木箱のなかに様々なオブジェを構成して独特な詩的な世界を創りだす手法で「箱の芸術家」として知られ、多くのファンがいます。
1967年にニューヨークのグッゲンハイム美術館で初の大規模なコーネル回顧展が開催され、ジイジは幸運にもそれを見る機会を得て以来のファンなのです。

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彼は生涯のほとんどをニューヨークから出ることなく、20世紀を賑わした多くのシュルレアリストのように奇癖や派手な行動で話題を振りまくこともなく、ひたすらマンハッタンの古道具屋や古本屋を歩き回り、古い書物やポスター、ピンポン玉やガラス壜や人形や細々したジャンクを漁り、自宅の地下室のアトリエにこもって、それらを組み合わせて箱の中に納めて自らの心のなかのユートピアともいえる、詩的で緻密な美の小宇宙を創り続けました。
また、コーネルは古いフィルムのコレクターでもあり、ハリウッド映画のフィルムをバラバラに切り繋いで作品をつくったりもしました。上映される作品は観客の大半にはさっぱり訳のわからない代物でしたが、観客のひとりであったサルバドール・ダリが激怒し、コーネルにつかみかかり、「お前は俺の頭からアイディアを盗んだ!」とわめき散らした、といったエピソードが紹介されていて、彼がある面で20世紀のシュルレアリズムのスーパースターよりさらに先進的であったことを象徴的に物語っています。

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「もしあなたが映画を途中から見ることを愛するなら、コーネルこそうってつけの監督である。映画館に入って、すでにはじまっている知らない映画の場面が眼に飛込んでくる。映像も会話もまったく神秘的、設定もわからずストーリーもまだ全然見えない。そうした瞬間をコーネルは捉える。」という著者シミックの言葉(柴田元幸/訳)は、コーネルの作品と鑑賞者の関係をうまく言い得ています。
狂気、異様、不条理といったシュルレアリズム作品のもつ一般のイメージとは異なって、コーネルの世界はあくまでも静謐、澄み切って、心の奥にしみ込んで、人の感性に美しい音を響かせます。
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by love-all-life | 2013-08-11 20:44 | 文芸・アート | Comments(0)