HAND & SOUL

HAND & SOUL「モノ」がたり 111 <バアバのカレンダー>

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ジイジの書斎の机の前の板戸に予定書き込みのカレンダーが貼ってあります。前に同じ場所にジイジがパソコンでつくったカレンダーが貼ってあったのですが、見づらい、使いづらいとクレームがつき撤去し、バアバが手描きでつくった新しいものに代えたのです。
パソコンでつくった冷たいカレンダーでは「時間」に血が通わないというのがバアバの本音のようです。ジイジにはそのことがよく分かるので素直にバアバに従いました。

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というのも、バアバこと内藤三重子は雑誌「私の部屋」と「生活の絵本」に手描きのイラスト・カレンダーを20数年掲載し続けた実績があるのです。
一人の女性の暮らしのプランでもある生活日記が、カレンダーの一こま一こまに描かれて1年365日、20数年ですから、バアバの人生にはもう一人のバアバが同居していて、二人分生きてきたようなものなのです。
かっての「私の部屋」の読者で、内藤さんのファンでしたとHAND &SOULに尋ねてこられる方が結構たくさんいます。
なかには「この子は内藤さんのカレンダーを見て育てたのですよ」とすてきなお嬢さん同伴で来られる方もいます。
バアバは、自分の子育てが必ずしも自慢できるものではなかったという思いがあるものですから、「よく、あんな勝手なことを書いたものね」とさかんに恐縮しています。
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ジイジが勤めを持っていた頃には、予定カレンダーに真っ黒に書き込みがあることが何だか自分が偉いことの証のように感じ、それが黒ければ黒いほど生きがいに感じていたようなところがありました。しかし振り返ってみて、書き込まれたもので自分の都合の決めたものは極わずかで、ほとんどは誰かが決めた用件の羅列に過ぎなかったなぁと気づきます。
それに比して、いま部屋に貼ってあるカレンダーはブランクだらけです。ほとんど真っ白に近いカレンダーを見て一抹の寂しさをまったく感じないといえばウソになりますが、いまではそれを自分が手にしている自由度の大きさとみなす心のゆとりをもつことができるようになりました。
日々の空欄を事前に決めてしまうのではなく、融通無碍でもいい、ただ一刻一刻を後で悔やむことのないよう過ごすことに集中しようと考えるようになりました。そんな我がままが許されるのも残り時間がわずかになったシニアの特権ではないかとも思うのです。

空欄だらけのバアバ作のカレンダーを見ていて、ふとバアバがイラスト・カレンダーを描いていたときの心境が分かったような気がしました。
バアバはカレンダーの上では自分が生きたいように生きていられたのだと。そしてバアバによって描きだされた、季節を愛で、住まいを飾り、クリエイティブに時間を過ごす自由闊達な暮らしは、バアバ自身が過ごしかった時間の過ごし方でもあったのだと。それはまた読者にとっても魅力的な時間の姿だったのだとも。

それにしても、現実を生きたバアバの子育てが、カレンダーの読者の子育てほど成功しなかったというのはちょっと皮肉です。
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by love-all-life | 2013-10-14 21:07 | 「モノ」がたり | Comments(2)
Commented by うらん at 2013-10-14 21:27 x
私の部屋、生活の絵本のカレンダー、懐かしい。あまりの懐かしさに涙ぐみそうになります。あのカレンダーみていろんなこと計画したり夢みたりしました。
Commented by love-all-life at 2013-10-19 21:49
うらんさま
うれしいコメントありがとうございました。
仕事が続けられるのも、皆さんのお陰と感謝しております。   内藤三重子