HAND & SOUL

野や森のように

e0153357_22364019.jpg

















日本男性の平均寿命が80歳を超えました。女性は86.61歳でここ2年連続で世界1位を堅持していて、男性は5位から4位へランクを上げました。
ま、慶賀のいたりと言うべきでしょうが、高齢化が社会問題とされる昨今、少子化、人口減少ががすすむなかで老人の数が減らないとなると、これはGOOD NEWSなのかBAD NEWSなのか微妙なところです。
さらに、父親を78歳で亡くした、現在77歳の当方としては、寿命に若干の猶予があたえられたとするか、あと3年の寿命と覚悟するか、これも微妙なところです。
寿命があと1年だろうが、5年だろうが、いずれそう長くない余命であることにかわりはなく、「人生の価値はいかに長く生きることではなく、いかによく生きることだ」の言葉をよりどころに、残された時間の質にこだわって過ごしたいものだと思っています。
しかしその「質の中身」が何かを明確にするのはそう簡単なことではなく、それを考えあぐねているうちに時間切れになってしまいそうです。

このように「老いの生きがい」について思いめぐらすなかで、しきりと頭から離れない言葉があります。

「野や森が『善いこと』をするような仕方でゴッドフリートは『善いこと』をした」

これは、最近再読して以来しばしば蘇って来るロマン・ロランの「ジャン・クリストフ」の中の1節です。

e0153357_22371857.jpg







ゴッドフリートというのは、音楽家を目指す主人公のジャン・クリストフの老いた叔父で、貧しく放浪の暮らしをして、ときにふらっと現れては、人生や音楽について悩んだり、傲慢になったりする少年ジャンに、慰めや、勇気づけや、ときには叱責の言葉をあたえます。
その言葉の根源にあるのは「謙虚さ」であり「自然への敬慕」であり、「人間への愛」です。
偶然からゴッドフリートの死を知ったジャンが偲ぶ言葉が上の一文です。

では、「野や森」がする「善いこと」とは何だろうか? 
「彼ら」がわたしたちに押し付けがましく何か仕掛けることはありません。ただ「彼ら」は存在し、ときどきの佇まいを見せ、命の営みを続けるだけです。
なのに「彼ら」がいないと、私たちの心は殺伐とし、淋しく、渇き感じます。
「自然でいる」だけで人に「善い」と感じさせる存在になることができるとしたら・・・
このようなゴッドフリートの生き方は、自分がかって若い頃に探し求めていた「生きがい」とは異なっていますが、いまとなっては理想と思える「老いがい」であるようにに思えるのです。


写真上:THE GREEN UNIVERSE 〜植物の神秘〜 撮影:ヤン・ハフト
写真下:ロマン・ロラン







[PR]
by LOVE-ALL-LIFE | 2014-08-07 22:37 | 文芸・アート | Comments(0)