HAND & SOUL

2009年 03月 12日 ( 1 )

風見


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自分が小さかった頃、街には多くの職人がいました。
大抵道路に向けて仕事場が開いていて、彼らの仕事がよく見えたものです。
ボクのお気に入りは提灯屋でした。
提灯の波打つ表面に見事な筆さばきで細い線をひいたり文字を描く。絶対失敗しないのです。
提灯屋は季節産業とみえ、冬場になると凧を描きます。
主に武者絵で、弁慶や荒木又右衛門などの強面が次々にできあがっていきます。
仕上げは、缶で温めて溶かした蝋を大きく見開いた眼球にさっとひと筆揮うのです。
蝋をつけた眼は凧が空中に舞うと、太陽光を背面に受けて発光体となるのです。
いったい何時間提灯屋の土間で過ごしたことやら、いまでもこの蝋を溶かす臭いは覚えています。

鎌倉市は数字の上ではれっきとした高齢者社会ですが、我が家の周りはかってのお屋敷の大きな敷地が分割されて、ニューファミリーが多いせいか子どもが多いのです。
いずれ分譲されるだろう空き地で、幼児から小学生くらいの子どもたちが入り乱れ一団となって遊ぶ情景は、自分が育った頃とそう大差はありません。
そんな子どもたちが、いま作っている小屋に興味津々なのです。

子供たちにとって、ものがつくられていく過程をじっくり観察する機会がきわめて少なくなっているなか、顔見知りのおじさんが突然小屋を作り始めたのです。
職人の技にはほど遠いくらいのことは子どもたちにも分かるはずですが、それでもいままで見せたことのない尊敬の眼差しで熱心に見てくれます。
もっと見事な鉋さばきを見せてあげられたらと心から悔やんでいます。

子供たちの眼差しに何か応えたいと、小屋に風見をつけようと考えています。
かって少年のボクに、職人の技と自然が見せたマジックを、オモチャは電池で動くものと思っている子供たちにも見せてやりたいと企んでいるのです。
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by love-all-life | 2009-03-12 19:47 | その他 | Comments(2)