HAND & SOUL

2011年 01月 21日 ( 1 )

よく伝わるということは・・・

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「バベルの塔」の話をご存知でしょうか。
古代バビロニアで、人びとが粘度とアスファルトで天にも届こうという巨大な塔を建設するのを見た神はこれを不遜な行為として嫌い、そこで働く職人たちの言葉をお互いに通じないようにしたために塔は実現しなかったという伝説です。
こんな話を昔、学生たちにコミュニケーションの大切さの喩えとして話していました。異なった技術、異なった考え方も情報を共有することによって大きな事業の達成を可能にするが、その逆は巨大な構造物も瓦解させてしまうというような話です。
ところが昨今のアサンジュ氏の外交秘密情報の漏洩問題、尖閣島のビデオ放映事件などに接していると、情報伝達の容易さが限りなく豊かな社会をつくっていくというような楽観に、神の目がキラリと光ったような気がしないでもありません。

こんな気分でいた矢先、1月19日朝の朝日新聞のOpinionコラムは「ヘーッ」と驚きの連続でした。
毎日お世話になっている@(アットマーク)の生い立ちと、@がもたした政治家の悲喜劇の話です。

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まず@ですが、もとはアメリカ発であることに驚きはありませんが、JISマークや〒のように然るべき権威ある公的機関によって定められたもののように思い込んでいました。
ところが@はボストン近郊の通信技術会社でいまも働くレイ・トムリンソンさんといういちコンピュータ技術者によって40年前に開発されたものなのです。
彼が何度電話をかけても通じない相手にしびれを切らして、相手が対応できる時にいつでも連絡可能な「電子住所」があればよいと創造したのがメールアドレスだったのです。@にしたのはパソコンの「キイボードに並ぶ記号のなかで最も地味でしたから」たまたま選んだだけで、もし@に不都合があれば!でも*もよかったというのです。
いち民間人が考えたアイディアを全世界の人が手紙に切手を貼るように決め事として従うという構図にはちょっと驚くとともに、いかにもネット社会らしい成り行きだなと思わされます。
記事のもう一つの話は、次期米大統領候補の声まであったサウスカロライナ州知事が@のお陰でその地位を失墜する話ですが、くわしくは新聞記事を読んでみてください。


アップルコンピュータが貧乏なコンピュータおたくの二人のアメリカの若者によってガレージで生れたという話にしても、この@の生い立ちにしても、サイバー世界にはいつもどこかに「あっけなさ」があります。そしてこの「あっけなさ」こそネット社会の最大の「強さ」でもあり、かつ「もろさ」でもあるようにも感じられます。
「強さ」とは言うまでもなく、ネットの情報伝達能力における早さ、広さ、安さ、そして自由さでしょう。しかし昨今のネット関連の問題をみていると、「もろさ」も同じ源から生まれてくるのだと思えます。
と云ってもこの「もろさ」はコンピュータ自体やシステムというより、それを扱う側の問題で、新しい技術が開発されたときにはいつもついてまわります。
しかしながらこの情報伝達技術の問題というのは、デジタルTVが開発されたけどいまいち使い方がよくわからないという類いの問題ではなくて、ひょっとするとその影響の広がりや深刻さにおいては原子爆弾をもってしまった人類の問題に匹敵するほどのものではないか、われわれの英知を結集して取り組まなければならないほどのことではないかと言ったら言い過ぎでしょうか。

古代バビロニアでは神を震撼させた人びとの情報伝達の威力が、いまや人類に災いを引き起こしているのを見て神はニヤリとしているかも。



「バベルの塔」ピーター・ブリューゲル 1563年
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by love-all-life | 2011-01-21 17:59 | 時事・社会 | Comments(1)