HAND & SOUL

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逆ってオモロイ

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前回のブログのなかでご紹介したように、大阪ではエスカレーターは人は右側に立ち、左側を急ぐ人が追越していくというカタチをとります。これは東京圏に住んでいるジイジにとってはちょっとびっくりでした。
かって20年前くらいまでは仕事で頻繁に大阪出張をしていたのですが、これに気付いたことはありませんでした。もちろんその頃にも大阪にエスカレーターはあったわけで、そのことに気付かなかったことにも、ちょっとびっくりです。もしかしたら、その頃はまだ大阪でも右立ちがはっきりしていなかったのかもしれません。

さて、エスカレーターは東京は左側立ち、大阪は右側立ち。新幹線で3時間たらず走っただけで起こるこの真逆の現象は何が原因なのか?
この謎を先日パーティで会った大阪からの女性が解いてくれました。
彼女は「それは70年の大阪万博のときからなんです」、「万博のとき海外からのお客さんに対応するため、海外で一般的な『右立ち』が取り入れられたのです」。というのです。また、「その昔武士は刀を左に差していたので、刀が人と接触しないように道の左側を歩く習慣が残っているからともいわれている」と説明してくれました。
その他にも、阪急電鉄が昭和40年代に梅田駅に設置したときにそのように案内したためとも言われているという説もあります。
う〜ん、なるほど。じゃ、東京の『左側立ち』の理由は?と調べると、「通路では右側通行を案内しているので、エスカレーターも左側に立ち止まって右側を歩いてもらおう」と決めたのが原因とされているようです。

では、東の『左立ち』と西の『右立ち』との境目はどのあたりかということになると、かなりしっかり調査した人がいて、静岡、名古屋、米原などは総じて左派、京都まで行っても左なんだそうです。つまり右派は大阪周辺だけということになります。このことは「万博説」を裏付けているように見えます。

因みに、エレベータ協会では「エスカレーターでは、歩いたり走ったりすることは、危険であるので立ち止まる」ことを勧めているようですので、念のため。

ま、たかがエスカレーターの立位置の問題じゃないかと言ってしまえばそれまでですが、ジイジにとって結構思いがけないショックでした。ショックというのは少し大げさですが、日本の代表する二つの現代都市の今の風物を代表する設備の使い方にこれほどの差異が現れることがとても面白く感じられるのです。
すべてがマニュアル化されたシステムのなかにも、アナログとしての人間がつけ入ることのできる隙間では、思いもかけない事象が起こり得るということが面白いのです。
大阪までやってきて、「エッ、エスカレーターの乗り方が逆じゃん」とい驚くことが単純にオモロイのです。

どこへ行っても同じコンクリートの道路、ビルの林立、街角のコンビニ。ユニバーサル・デザインで同じような安全と快適を提供されることで人々がなんとなく感じている倦怠(贅沢な話ですが)が、このゴールデンウィークの空前の国内旅行ブームと無関係ではないように思えます。
みな、ちょっとした「逆」を求めて旅にでるのでは・・・。
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by love-all-life | 2013-04-26 16:32 | 時事・社会 | Comments(0)

大阪はワンダーランド

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先週の土曜日はHAND & SOULは臨時休業をいただいて、大阪・星ヶ丘ソーイング・ギャラリーで開催中の「HAND & SOUL内藤三重子・鎌田豊成」展での「お話会」行ってきました。

梅田駅から京都行きの京阪線に乗って枚方市駅で交野線に乗り換え、星ケ丘という駅で降りて、住宅地の坂道を5分ほど登ったところに目的地の星ヶ丘洋裁学校の門柱がありました。
中をのぞくと、茂った木立と春の野花が咲き乱れる庭の奥に朽ちかけた木造家屋が見えます。えッ、ここでいいの?と一瞬歩みを止めますが、同伴のナーヤこと村椿菜文と中2の孫娘H、4才のKはサッサと奥へ入っていきます。そして前にここに来たことがあるバアバもサッサと奥へ入っていきます。
玄関はどこかわからないまま進むと、教室とおぼしき踏み石を置いたガラス戸の横の板に展覧会のDMが鋲で止めてあります。「アッ、ここか」と思った瞬間、ガラス戸が開いて、既知のHちゃん、Nさんたちが大手を広げ歓迎の笑顔で出迎えてくれました。

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そこはソーイング・ギャラリーという名の通り、昭和23年に建てられた古い古い洋裁学校の教室=ギャラリーなのです。ですから外見はちっともギャラリーらしくないのですが、そ場になじんでくるにつれて、ギャラリーの教室と校庭らしき裏庭を含めて、自然の古びと人が手をかけた部分が渾然一体となっていて、なるほどHAND & SOUL展にぴったりの空間だと合点がいきました。
以前、校舎の老朽化で取り壊しの話が上がったとき、有志の人たちが知恵を出し、力を合わせ、汗を流して存続を実現し、その一室をギャラリーとして自主運営しているのです。

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敷地の中にはピカピカした美麗なものはありませんが、子供たちが自由に遊べる広っぱ、陶芸窯、カフェなどなど、至福の時間を生み出す装置が備えられています。古い板塀が壊れれば、はがれた板で船のオブジェをつくったり、庭の片隅にスクリューが転がっていたり、裸電球が下から生えてテーブル・ランプになっていたり・・・まるでお伽の世界です。
星ヶ丘という地名も、どこか童話めいていますが、実はギャラリーのすぐそばに天の川(地図には「天野川」と記されています)が流れているのです。そしてなんと七夕伝説がここから生まれたという真面目な説があるというのですから、だんだん異次元の世界に迷い込んだような気分になってきます。

その日は、参加者全員がサポーターのチーフメンバーNさんの手打ちうどんに舌鼓をうったあと、ナーヤの司会でバアバとジイジのお話会があり、皆さんとの3時間の交流を楽しみ、別れを惜しんで新幹線に乗りました。
それにしても、枚方をヒラカタ、十三をジュウソウ、交野をカタノと暗号のような地名を経て、訪ねたところが七夕伝説の地だったり、エスカレータで歩かない人は「右側」に立っていたりと不思議なことだらけで、大阪というところはわざわざユニバーサル・スタジオを訪れるまでもなく充分ワンダーランドでした。
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by love-all-life | 2013-04-18 00:32 | その他 | Comments(0)

最高の人生の見つけ方

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周囲の丘の稜線がこ子猫の背中みたいにふんわりと柔らかくなり、木の芽、若葉、花の色がパステル画のように綾なす季節になるといつもある感慨をもちます。
「あ〜、あと何回この景色を見ることができるのだろうか・・・」

自分の生涯時間というものを意識したのは、多分30代後半のことだったと思います。「オレのこれからの人生の長さは、すでに経験した時間の長さなのだ。」とフと思ったのが最初だったような気がします。
以来、既知の時間と未知の時間の長さの反比例は容赦なく着実に進行しており、昨年他界した音楽評論家・吉田秀和さんの言葉を借りれば、「若い時の一日の終わりは、それだけ自分が生命の出発点から遠くまで歩いてきたかを意味していた。しかし、今は同じことが終点への接近を意味する」という意識が年を追うごとにリアリティを増してくるのはいたしかたありません。


こんなシンキ臭い話をし始めてしまったのも、先日の夜観たTV映画『最高の人生の見つけ方』のせいかもしれません。

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当方は、ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン主演という、芸達者なアカデミー賞コンビのキャスティングに惹かれて観たのですが、アメリカでも日本でも封切り当初大変な興行成績をあげた評判の映画だったようです。
ストーリーは、偶然に同じ病院でベッドを隣り合わせた、しかも偶然にも同じ余命6ヶ月を宣告された2人の末期癌患者。一人は大富豪のエドワード、もう一人は謹厳実直な自動車整備工カーターが、それぞれの「死ぬまでにやっておきたいこと」をリストにして、病院を脱出し、リストの項目をひとつひとつ実現して行くというお話です。
「棺おけリスト(Bucket List)」なる項目には、カーターは「荘厳な景色を見る」、「赤の他人に親切にする」、「涙が出るほど笑う」と記し、エドワードは「スカイダイビングをする」、「マスタングを乗り回す」、「ライオン狩りをする」、「世界一の美女にキスをする」などをつけ加えます。
病院を飛び出した二人の生涯最後の冒険旅行は、タージマハルから野生の楽園セレンゲティ、最高級のレストランからいかがわしいタトゥーショップ、レースカーのコックピットからスカイダイビング用の小型機まで。
二人は生きる上で直面する様々な疑問に取り組みながら、ひとつづつリストを埋めていく中で生涯の友を得て、死の時を迎えます。

死をテーマにしながらこれほどカラッと笑えて、奇想天外な状況設定もアホらしく感じられないのは、監督のロブ・ライナーの力量であるにしても、主人公の二人が芸を乗り越えて実在人物のように感じられるほど感情移入をしてしまったのは、こちらが同世代だからでしょう。
いつかこちらも「棺おけリスト」をつくる日がくるとして、「エドワードのような相棒に出会う」を項目に加えようかしらん。
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by love-all-life | 2013-04-10 21:08 | 文芸・アート | Comments(0)