HAND & SOUL「モノ」がたり 57 < LESS IS MORE>
“LESS IS MORE”・・・この言葉をこの 小ブログで何度か使ってきました。小石にスタンプで押して店に並べたりしてもいます。お客さんから「これどういう意味ですか?」と聞かれることもあってジイジなりの翻訳をして説明したりしています。
”LESS IS MORE”は20世紀のモダニズムを代表する建築家ミース・ファン・デル・ローエが、自身の余分なものを排除したユニバーサルな建築についてのコンセプトを語った言葉とされています。
直訳すれば「より少ないことは、より多いこと」ですが、真意は「より少ない表現は、より多くを語る」という意味で使ってます。
古来寡黙を美徳とする日本人には、こういう発想は割合い受け入れやすいものでしょう。実際ローエは日本庭園の枯山水の表現哲学にいたく感心しています。
「わずかな表現が結果的により多くの効果を生み出す」という考え方は、日本の表現のあらゆる世界の基本的な作法です。
芭蕉が俳句の極意を「いいおほせてなにかある」という言葉で残しているのがその適例でしょう。現代風には「全部言ってしまっちゃオシマイよ」とでもなるのでしょうが、言いたいこと全部を言わないで、受け手のイマジネーションと感性が加わることで、より大きく印象的に伝えるのが俳句だと言うのです。
広告づくりに長年関わったことがあるジイジにとっては、この発想こそ広告づくりの極意でもあるはずだと思いながらも、クライエントや上司からあれも言え、これも入れろの圧力に打ち勝てない口惜しさをイヤというほど味わってきただけに、これを成し遂げた表現に出会ったときの感動と敬意は一段と大きくならざるを得ません。
しかしジイジが”LESS IS MORE”にこだわるのは、この言葉こそ表現の世界にと止まらずこれからの人々の生きざまを考えるキイワードでもあると思うからです。
「より少ないことは、より豊かなこと」とも訳せるこの言葉は、ものをたくさん持つことだけが豊さではないのだとに知り、清貧という言葉に爽やかな心地よさを感じながらもなお煩悩を断ち切れない現代人が座右の銘として欲しいなと考えるからです。
座右の銘がなぜ英語なんだという向きには「吾唯知足(われ唯足るを知るのみ)」という言葉もありますよ。
写真中:「LESS IS MORE」廃材の額 T190mm×W200 ¥6,000
写真下:「LESS IS MORE」竹の切り株のランプ T190mm×W130 ¥6,000
by love-all-life
| 2010-09-09 18:39
| 「モノ」がたり