Merry Christmas !
クリスマスが近づくこの時期になると思い出す一枚の絵があります。アメリカ人が最も誇りとするイラストレーターのノーマン・ロックウェルが描いたもので、今はなき大衆誌サタデー・イブニング・ポスト1956年12月29日号の表紙を飾った作品です。
子供にとってクリスマスの楽しさの主人公であるサンタクロースの存在が幻想であったことを悟った瞬間、全ての子供が通過しなければならない大人への通過点を見事に描いた微笑ましくもせつない傑作です。
日本ではサンタクロースというと白の縁取りの深紅の衣裳に黒長靴、メタボな出っ腹に立派な白ひげをたくわえてお人好しの笑顔を振りまくイメージですが、あれはコカコーラが自社のコーポレートカラーに合わせて宣伝のためにつくり出したアメリカ産のイメージと知っていても、それ以外のサンタをイメージすることはなかな困難です。
20数年も前でしょうか、トルコを旅したとき地中海に面したミラというところでサンタクロースの教会というところに案内されたことがあります。正しくは聖ニコラスの教会といい、前庭に厳粛な姿で立っている聖ニコラスの銅像は、あの磊落なサンタのイメージとは大分かけ離れたものでした。
ミラの司教をしていた聖ニコラスは町の人に愛され、とくに子供たちから慕われました。昔この地方では持参金がないと娘は結婚できませんでした。ある没落した貴族の三人の娘の長女が適齢期になったとき、聖ニコラスは娘の家の窓からそっと金貨を投げ入れておきました。金貨は煙突のそばに干してあった靴下のなかに落ちました。二番目の娘が適齢期になったときも金貨が投げ込まれていました。三番目の娘のとき、父親は見張っていて、金貨を投げ入れるのが聖ニコラスであることを知りました。この聖ニコラスの善行の話が広まり、クリスマスの前夜子供たちが靴下を吊って聖ニコラスのプレゼントを待つという習慣が始まったとされています。
近年はサンタはフィンランドに住んでいて、子供たちがプレゼントのお願いの手紙を出すと叶えてくれるとか、グリーンランドでは公認のサンタクロースを指名しているとか、子供の夢を壊さないようにとの努力が世界的になされているようです。でも先に紹介したロックウェルの絵のような洗礼を一度でも受けてしまった子供たちは、パパにそっくりのサンタであろうが、パチンコ屋の門口のサンタであろうが、プレゼントをくれるサンタが本物と信じた振りをするしたたかさを身に付けているようです。
それも承知の上で、いまHAND & SOULでは店先にバアバの手づくりのサンタをおいて、近所の子供たちの反応を伺うという子供じみた遊びを楽しんでいます。
そしてお知らせです。
12月17日(金)/18日(土)/19日(日)は HAND & SOULで2回目の「マーガレットプレス」のBOOK STOREです。
http://marguerite-press.net/naya_diary/の2月13日便をご覧ください。
by love-all-life
| 2010-12-15 18:51
| 文芸・アート