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HAND & SOUL

生の短さについて

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ぶらりと入った本屋で「生の短さについて」というタイトルが目に飛び込んできました。
近頃なにかとこの手の表題が目につくのは、時間を持て余した高齢者が本屋の棚のまえでうろうろしているのを出版業界が見逃さず「老後の生き方」や「終末の迎え方」といった類いの本を並べるからでしょうし、それ以上に当方がそのマーケットのど真ん中という年齢だからでしょう。

著者は、あのローマの哲学者・政治家・詩人のセネカ! う〜ん,セネカか。その昔、美術大学の受験時代に石膏デッサンで胸像を描いた記憶がありますが、この名前にお目にかかるのはほとんどそれ以来です。
陰謀や裏切りや復讐、血や殺人など、権謀術数が渦巻く古代ローマの権力の頂点に常に寄り添いながら、毀誉褒貶の荒波に70年近くも漂いつづけた思想の巨人が得た人生訓が、この平和ボケした日本(とも言えない昨今ですが)で、年金の額を気にしながら細々と生きるわが身の参考になるとも思えませんが、やはり「生の短さについて」というタイトルと、たとえ難しくてもこれくらいならなんとか読めるだろうと思える文の短さに惹かれて買ってしまいました。

セネカが言っていることは、人は「人生は短い」と嘆くが、われわれは短い時間をもっているのではなく、実はその多くを浪費しているのである。もし人生の「時間」が有効に使われるならば、偉大なことをも完成できるほど豊かな時間が与えられている。しかし放蕩や怠惰で日々を送り、どんな善行にも使われないならば、結局最後になって、人生が最早すでに過ぎ去っていることに気付くことになる。われわれは短い生を受けているのではなく、われわれ自身がそれを短くしているのである。たとえば、莫大な王家の財といえども、悪しき主人の手に渡れば、たちまち雲散してしまうが、たとえつつましい財産でも善い管理者に委ねられれば、使い方によって増加する。それと同じように、われわれの一生も上手に按配する者には、大きく広がるものである。 と、まぁざっとこんなことです。

人生を長くするのも短くするのも、つまるところは「あなた次第」という訳です。さて、自分は人生の時間を長く使ってきただろうかと自問してみると、この歳まで大過なく生きて来たという意味では「長かった」と言えるし、ではどんな善行を為したのかと問われれば、「短かった」と言わざるを得ない心境です。
2012年という過去と、2013年という未来の狭間にたって、現在という「今」を意識し、無為に過ごさないように努めなければと思います。

最後にセネカのもう一つの言葉を、
「人生は物語のようなものだ。
重要なのはどんなに長いかということではなく、
どんなに良いかということだ」

では、皆さんよいお年を、そしてよい物語りを。
by love-all-life | 2012-12-31 12:44 | 文芸・アート