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HAND & SOUL

「たからモノ」がたり 1 <東京オリンピック入場券>


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HAND & SOULにみえたお客様で出版関係のお仕事をしているKさんから、いま企画している本のための取材をしたいと声をかけていただきました。
Kさんのテーマは「箱」で、いろいろな人が大事にしている「箱」を取材して、「箱」にまつわる物語や魅力や魔力をまとめてみたいという趣旨でした。
箱といっても当方の箱といえば、長年にわって集め溜め込んだガラクタを投げ込んだ汚い箱ばかりですよとお話ししたのですが、それでもよいということなので取材していただくことになりました。
撮影の前日に溜め込んだしょうもないJUNK類の入った箱を、押し入れや戸棚の奥から引っ張りだし、中身を改めると、30年、40年、50年という過ぎ去った時間が現在形で転がり出てきます。
撮影当日、KさんとカメラマンのTさんが「箱」をそっちのけで中のガラクタをおもしろがるのを見て、これらのモノたちをひとつづつ取り上げるブログも「アリかな」とのアイディアが浮かびました。


そこで第一回目です、初回で取り上げるのは「東京オリンピックの入場券」です。2020年の東京オリンピックの入場券をいち早く確保したというお話ではありません。50年前の1964年東京オリンピックの入場券のことです。それも未使用なのでちょっとしたレアものの類いといえます。50年前に購入し採っておいたものというより、使えなくなったチケットがそのまま放っておかれて50年たってしまったものなのです。

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このチケットは1964年10月11日駒沢陸上競技場のサッカーの試合の観戦チケットです。
北朝鮮の出場試合ですが、対戦相手国がどこだったか記憶がありません。Wikipediaで調べてみるとハンガリー、ユーゴースラビア、モロッコのいずれかですが、いずれにせよ実現しなかったゲームです。
というのも、出場予定の北朝鮮は試合の直前になって失格となり、選手団が帰国してしまったのです。その結果チケットは無効となりました。もちろん直後には払い戻しもできたのですが、無精もののジイジが怠けていたため未使用のまま生き残ったというわけです。
北朝鮮が失格となった理由は、同国の陸上競技と水泳競技選手が非承認の競技大会に出場したということなのです。なぜそれがペナルティの対象になったのか詳しくはわかりません。サッカー競技ではチームにプロの選手がいたということでイタリアが出場停止となったりしていて、時代の差を感じます。

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手もとのチケットのデザインは、日本を代表するグラフィック・デザイナー故亀倉雄策のシンボルマーク・デザインが汎用されておりなかなかスマートです。
中央のサッカー・ゲームであることをわからせるパターンは、英語表記に弱い当時の日本人のために初めて日本の国際競技に採用されたピクトグラム(絵文字)です。
チケットの半券(もぎられる部分)は3つに分かれていて、ゲート(門)と、エントランス(入口)で2回もぎられ、席の部分だけが手もとに残ることなっていて、なんだかすごく厳重な感じです。
開催競技場である駒沢陸上競技場の収容人数は約2万人ですから、次期東京オリンピックのメーン・スタジアムが8万人収容であることを考えると、オリンピックも随分スケールアップしたものだと思います。
因に、このチケットにはどこにも「サッカー」という文字が見当たりません、「蹴球」か「FOOTBOLL」です。次の東京オリンピックでも「サッカー」という文字は使われないのでしょうか。
一緒に画像に入っているコインは、当時発行された100円の記念硬貨です。こんなものまでとっておいたのですから、ずいぶんオリンピックに熱くなっていたいたものです。

当時夢中になって白黒テレビで観戦し、その後映画やビデオで何回も観、東京を、日本をすっかり変えてしまった、遥かなるなつかしい東京オリンピックの生の姿の一片が、偶然のこととはいえいま手の中にあります。
2020年の東京オリンピックを自分の目で観ることが危うい歳であることを思うと、自分がやはり「あのオリンピック」世代の人間なのだということを改めて認識し、ほろ苦い感じです。









by LOVE-ALL-LIFE | 2014-06-14 21:22